蒼夏の螺旋

   “内助の功って奴だ…と思う
 


大きな台風が、それも2つも一遍に
やって来ているのだそうで。

 『今年はイヤな意味での大盤振る舞い多くないか?』

バラエティと映画の狭間、
気象情報が半分だったニュースを観つつ、
そんな言いようをルフィが紡いだところ。
帽子として余裕でかぶれそうなほど大きなカップに
更に大盛りになってたポップコーンを、
ほんの二、三個というささやかさでつまみ食いしたゾロが、

 『まぁな。あの暑さは二度と御免だしな。』

企画部所属で、しかも渉外担当。
ネットに頼らず、
自分の足で相手のところまで出向いて、
直に逢ってという今時には珍しい形で
地道に取引先の開拓をして来たゾロにしてみれば。
自分は丈夫だからいいとして、
相手方の職人さんとかが高齢の方だと
なかなか約束が取り付けにくいわ、無理をさせられないわ、
今年は特に余計な艱難が多かったらしく。

 そして、そんな大きいのが来そうだってのに、
 海産物系の商品の出物開拓にって、
 週末にかけて海沿いの土地を巡ってくるんだと。

ちょうど直撃の頃合いじゃんかって、
膝にまたがって揺さぶってやったけど。
なんか別の挑発だと思ったか、
苦しゅうないとばかり
そのまま掻い込まれてしまっちゃあ、
話しどころじゃあなくて。(笑)

 “…ったくもうもう。/////////”

あんの体力馬鹿はもう、と。
コンロの前にて、肉ジャガを煮込みつつ、
不意に昨夜の一幕を
思い出してしまったルフィ奥さんだったりし。
オーブンにはでっかい鷄の骨つきもも肉が
ほどよい照りを出してローストされており、
ここへちぎりレタスと千切りキャベツのサラダをつけて、
大根と薄あげの味噌汁でフィニッシュという予定。

 “そんな、台風真っ只中へ飛び込んでくなんてサ。”

あのゾロがそう簡単に吹き飛ばされるとも思えぬが、
海だと波も高くなるだろし、危険な地域には違いない。
それに、電車が止まったら? 高速道路が封鎖されたら?

 “帰って来れなくなるんじゃんか。”

そこんところが判ってるのか、あのヤローと、
怒っているからか、口調もやや乱暴なルフィさんだったりし。
そこへスマホへと掛かって来たのが、
噂をすれば何とやら…つっても独り言だったけど。
困ったヤローこと、ご亭主からの帰るコールであり。

 「うん。今仕上げに入ったとこだぞ。
  …判った、気をつけてな。」

何が詰まらないかって、
出張する系の商談は、こやってご飯作って待つっての、
しなくていいのが詰まらない。
そりゃあ、まだまだそんなに手際がいい方じゃあないけどさ。

 おっ、て。
 美味いな、これっ、て。

ちゃんと気づいてくれるゾロだから、
作り甲斐もあって最近は何か楽しいのにね。
出張しちゃったら やる気も失せて、
ホカ弁でいっかって、なっちゃうんだぞ?
……いや、あれもなかなか美味いけど。////////

  …………ん〜っ、と。お塩、かな?

お玉片手に味見も慣れたもの、
途中で体を真横に傾けてオーブンを覗き込み、
よ〜しよしよしと、どっかの教官みたいな声を出し。
ご飯が炊けたぞ〜っと炊飯器がアラームを鳴らしたのを合図に、
千六本に切ったダイコンを鍋へ投入、
みそは合わせで、薄あげは行きつけの豆腐屋さんの。
ああそうそう、箸休めにキュウリの塩揉みでもと、
冷蔵庫に向かい、取り出したキュウリ。
板ずりしてから包丁を細かく、
でもって浅めに入れて蛇腹切りにして。


  さあ、いつでもかかって来なさいっ!


無駄に勇ましいと、
またぞろ旦那様に足元掬われるぞ〜。(笑)






  〜おそまつっ〜  13.10.23.


  *再開したはいいけれど、
   ロクなゾロルを書いてないような気が。(特に旦那のほう…)


**ご感想はこちらvv*めるふぉvv

**bbs-p.gif


戻る